リーダーシップ論コラム2.器用人材は「リーダーシップ人材」にはなれない?
「脳科学の旅」で記載しましたが、「集中力がなくミスが多い」「記憶力もあまりよくない」「自分自身の能力に強いコンプレックスを持ち、努力できる」人材こそが、企業の未来を想像し創り上げていく、「リーダーシップ人材」です。
「リーダーシップ」は誰でも発揮できるものではありません。未来が鮮明に見える「戦略眼」を持つ人材の特殊能力です。あらゆることをそつなくこなす優秀な人材でも、未来への羅針盤がなければ「リーダーシップ」を発揮したくてもしようがありません。日本企業低迷理由の1つは「優秀な人材=リーダーシップを発揮できる」を前提としてしまい、結果「リーダーシップ不在」となった点です。
「戦略眼」の素質を持つのは、「不器用人材」です。「不器用人材」はなぜ不器用なのか?モノゴトを大局で見る素質のためです。その為、オペレーショナル的なコトを苦手とし、「要領が悪い」「ミスが多い」などが特徴的。何でもこなせる「器用人材」とは全く異なり、大体「あいつはできない奴」とレッテルを貼られています。
・戦略的素養を持つ社員は細部を重視しない為、下位レベルの仕事で苦労する能性が高い。キャリアの初期から保護しなければ、育成の初期段階で除去されかねない。
『マネジャーの教科書』マイケル D.ワトキンズ著 ダイヤモンド社発行
企業の未来を創る「戦略眼」を身に着ける原動力は「なぜ自分にはできないのか?どうすればできるか?」、自分の能力へのコンプレックスです。そこから自分の能力の120%を出し尽くし現状を打破する、とてつもないエネルギーが生まれます。「器用人材」にはそこまでの原動力がありません。自分の能力の100%未満で済むためです。戦略眼を身に付けるためには『120%のエネルギー』が必須です。
・「フロー(爆発的成長)」を発生させるためには、できそうでできない課題に取り
組む(120%の努力が必要)ことである。
『モチベーション3.0』ダニエル・ピング著 講談社社発行
・テストの内容は同じだが、2つのパターンで成績に影響があるか?をテストした。
文字が読みやすいテストを受けた学生グループ、文字がフォントが小さいなど読みに
くいテストを受けた学生グループ、どちらの方が成績が良いか?読みにくいテストを
受けた学生グループの方が成績が良い。認知に負荷をかけると、脳は本気モードに突
入する(120%の努力)。
『ファスト&スロー(上)』ダニエル・カーネマン著 早川書房発行